Vol.70 2017年10月号
2017年10月03日
こんにちは!!
今年も残り3ヶ月になりました。
皆さまお元気でお過ごしでしょうか?
今月も経営サポート隊通信を
元気にお届け致します!
【河合由紀子のちょっとイイ話】
(「藁のハンドル」ヘンリー・フォード著 竹村健一訳 中公文庫)
大量生産を可能にすることにより、自動車を庶民のものとしたヘンリー・フォードは、創業当初はほんのわずかな従業員を雇用する小工場から、わずか18年で直接雇用する人は20万人、関連する協力会社の従業員を含めると60万人もの人々を雇用するまでになりました。その経営に対する考え方はどのようなものであったか、彼の著作である「藁のハンドル」から引用して考えてみたいと思います。
『労働者は、売り手である以上に買い手である。車輪の回転にはずみをつけるのは買い手側である。商品は一般の人々に買いやすいようにすることである。それが仕事をつくり、賃金を生む。それが事業拡大と、より大きなサービスのための余剰を生むのだ。それをなしとげるのは、経営者の責務である。労働者はどんなシステムのもとでも働くし、労働者にとっては、その生産方式が最良のものであるかどうか、人間の作業や材料から最大の成果が得られているかについて考えるのは、彼らに課せられた義務ではなく、実はどうでもいいことなのである。いずれにせよ一日働いたことに変わりはない。一日の仕事の相違は、その生産物の価値に現れる。そして、ここにこそ経営者の職務がある。』
フォードは、本書のはじめに「資本」「労働」「大衆」の利益は一致するものであると言っています。つまり、資本(会社)が利益を多く取って、賃金を下げ、顧客からも不当に利益を得れば、まわりまわって経営はうまくいかなくなる。なぜなら労働者は売り手である以上に買い手であるから、買い手の懐が乏しくなれば、不当に高い製品は購入されなくなるということを言っているのです。そして、経営者の仕事は、そのバランスをいかに考え整えるかであると言っています。
本書は1926年に書かれたものですが、現在にも通じるところがあるのではないでしょうか。情報が複雑化し、日々様々なものが変化する現在において、経営判断は大変難しいものです。ですから、情報を多くの人から集めるのは大切なことですが、企業の形をデザインすること、言い換えれば方向付けることは経営者にしかできません。そしてその成果は生産物(あるいはサービス)の価値になって現れるとフォードは言っています。
社会に価値をどのようにして生み出し、その価値をどのように配分するかを決めるのが経営者の仕事であり、それは、大規模な企業であっても中小企業であっても変わりはありません。多くの便利なツールが安価に使えるようになった現在において、むしろ中小企業の方が機動力の面で優位な部分も大いにあり、経営者の意思決定次第で中小企業にチャンスがある環境が整ってきているとも言え、なんだかワクワクするのは私だけでしょうか。