Vol.174 2026年6月号
2026年06月01日
梅雨の季節がやってきました。
紫陽花が雨に濡れる姿は、春から夏への移ろいを
感じさせてくれます。
今月も元気に経営サポート隊通信をお届けいたします!
【河合由紀子のちょっとイイ話】
今月は、「会計の世界史―イタリア、イギリス、アメリカ500年の物語 田中靖博 日本経済新聞出版社」から、『ROIの高め方を示したデュポン公式(341-344頁)』をご紹介したいと思います。
『デュポンの数値管理の基本は「それぞれの事業の収益性」を厳しくチェックすることでした。そのための仕組みは20世紀初めに社長に就任したピエール·S·デュポンのときに構築されました。実はこの「数字に強い社長」の経歴には「アメリカ管理会計の源流」が流れています。科学的管理法の父テイラーは鉄道部品製造を行うジョンソン社の会計コンサルティングを行っていました。このジョンソン社に出資していたのがピエールです。彼はのちにジョンソン社の社長になり、そこで同社の洗練された原価計算·会計システムを目にしました。これに感動したピエールは、のちにデュポンの社長に就任した際、ジョンソン社から“数字の鬼”ジョン·ラスコブを右腕として引き抜きました。こうして「数字に強い」社長と「数字の職人」財務部長コンビが誕生したのです。19世紀当時に最先端だった鉄道会社の原価計算·管理会計の考え方がテイラーを通じてジョンソン社に伝わり、それがM&Aによってデュポンへと移っていったのです。(中略)ピエール社長とラスコブの“数字の鬼”コンビは、「セグメント情報」の構築に取りかかりました。それまで仕切りが曖昧だった社内組織を「黒色火薬·無煙火薬·ダイナマイト·販売」の4つのセグメントに区分し、それぞれの収益性を計算して業績評価を行うことになりました。
ここで業績評価の方法としては、利益率や原価率で行われるのが一般的でしたが、“数字の鬼”コンビは「本当にそれでいいのか?」と疑問を持ちます。利益を出すために会社は「投資」をしているのだから、その「投資に見合った利益」という観点が重要ではないか、と彼らは考えました。これをもとに生まれたのが、“伝説”のデュポン公式〈R=P×T〉です。
ここで表現される「資本」とは、「投資の大きさ」のことです。投資の大きさに対してどれだけ利益があるか-これを示すものがROI(Return On Investment:投下資本利益率)です。ROI(利益÷資本)を利益×回転率に分解したものがデュポン公式です。
利益/資本(ROI:資本利益率)=利益/売上(P:利益率)×売上/資本(T:回転率)
これをみればROIは利益率と回転率の掛け算によって計算されることから、利益率·回転率のいずれかを上昇させればRPIは上がることがわかります。デュポン公式で示された「利益率と回転率の掛け算」は、ビジネスを考えるうえで重要なヒントになります。この公式は会計を超えて、経営の常識になったといっても過言ではありません。デュポンの各セグメントはROI·利益率·回転率のそれぞれについて目標を決められました。図体のデカい(投資の大きい)事業は、それに見合った「大きな利益」を求められます。「投資に見合った利益を出せ!」-このメッセージはデュポン社によってしっかりと各事業担当者へ伝えられました。実はROI思考はもともと鉄道会社において存在していました。「投資の大きさに見合った利益」をえるためにはどのルートに線路を引けばいいか?あるいは運賃をいくらに設定すべきか?こうした鉄道経営の意思決定にROIが用いられていたようです。』
デュポン内部で内密に使われていたROIが世間に広く知れ渡るようになります。そのお話は、また次回お伝えしたいと思います。








