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経営サポート隊通信
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Vol.148 2024年4月号

2024年04月01日

ようやく日差しが暖かくなってきました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか?
今月も元気に経営サポート隊通信をお届けいたします!

 

【河合由紀子のちょっとイイ話】

今月は先月に引き続き、2024年2月10日日経新聞掲載の、伊藤忠商事会長岡藤正広氏のインタビュー記事『「謙虚は美徳」もう古い 伊藤忠会長CEOが喝』を取り上げたいと思います(一部編集)。

『「優秀な人材を海外企業に奪われないようにすることも重要だ。(世界水準に近づくように)賃上げを進めていく必要がある。我々は24年に全社平均で6%の賃上げを目指す。初任給は5万円アップを実現したい。我々が頑張れば、日本企業の底上げができるはずだ。22年までの10年間で、日本企業の人件費は16兆円増えた。一方で企業の収入は74兆円増え、株主配当は19兆円増えている。人材教育に投資をする余力は大きい。」

伊藤忠商事は残業が当たり前だったが、岡藤氏は社長就任後にトップダウンで朝型勤務に切り替えた。午後8時以降の勤務を原則禁止にして社員の意識を変えた。残業禁止まで行ったが、業績にマイナスの影響も出るのではとの懸念もあるが?

「日本の伝統的な働き方が、競争力を下げてきたと私は思う。一方、我々は少数精鋭で生産性を上げることに特化してきた。そのためには、朝型勤務が効果的だった。日本企業はフレックスタイムが主流で、早く来る時もあれば遅く来る時もある。午前10時に出社した人は新聞を読みコーヒーを飲んで10時半になり、昼ご飯に行く。そういう社員に限り、午後8時まで残業している。私は午前6時前に出社し、昼も食堂に行かず自室でファミリーマートの弁当を15分で食べ、午後3時ごろにいったん自宅に帰る。午後5時から会食に向かい、午後8時には帰宅する。とても効率が良い働き方だ。」

また、岡藤氏は働き方改革こそ少子化対策と説く。

「働き方改革は出生率向上にもつながっている。実は伊藤忠社員の21年度の出生率は1.97だ。この数値は日本の出生率1.30を大きく上回っている。働き方改革を始めた10年度は、出生率は0.94しかなかった。働き方を見直したことで生産性が上がり、プライベートの時間を確保できるようになった。日本企業は働き方改革について、楽をするために行う取り組みだと考えがちだ。生産性を高めるためだと徹底して行えば、結果的に社員も幸せになる。少子化は恐れるべからずだ。」

岡藤氏は、商社で万年4位だった伊藤忠を三菱商事や三井物産と争うまでに成長させた。時価総額が10兆円に上り、存在感から市場では「岡藤プレミアム」ともいわれる。岡藤氏の約14年に上るトップ在任期間で、伊藤忠商事の時価総額は10兆円と約8倍に増えた。日本が「失われた30年」と言われる時代に成長できたのは、モーレツなど旧来の習慣の断絶で活力を取り戻したことにあると岡藤氏は自己評価している。

朝型勤務や社員の出生率を指標にするなどの働き方改革は、大手商社でも群を抜く。働き方改革を業績向上にいかに結びつけるか、いまだ試行錯誤している企業は多い。「生産性を高めるためだと、徹底することが大事だ」と岡藤氏は説く。また、「謙虚は美徳」の文化も捨てるべき企業気質と断じる。不確実性の中で強さに裏打ちされた自信を示さないと、ビジネスで勝てないと憂う。相次ぐ賃上げなど日本企業はようやく巻き返しに動き出した。岡藤氏がいう強い日本企業を取り戻すために、古い習慣を断つ経営者の覚悟が必要だ。』


Vol.147 2024年3月号

2024年03月01日

まだまだ寒い日が続きますが
皆さま元気でおすごしでしょうか?
今月も元気に経営サポート隊通信をお届けします!

 

【河合由紀子のちょっとイイ話】

今月は2024年2月10日日経新聞掲載の、伊藤忠商事会長岡藤正広氏のインタビュー記事『「謙虚は美徳」もう古い 伊藤忠会長CEOが喝』をご紹介します。

『バブル崩壊直後の1990年代から「失われた30年」が続いてきた日本で、企業が攻めの姿勢に変わり始めた。伊藤忠商事は残業禁止など大胆な働き方改革を断行したほか、リスク覚悟で巨額投資を決断し、利益水準で三菱商事や三井物産と争うまでに稼ぐ力を高めた。岡藤正広会長CEOはグローバルで勝ち抜くために、日本の伝統的な企業習慣を断つ必要性を説く。

スイスの国際経営開発研究所(IMD)がまとめた2023年の世界競争力ランキングで、日本は35位で過去最低になった。日本企業は攻めの姿勢が出てきたが、ランキングは低いままだ。

「私はこの調査を別の視点で見ている。政府や国際機関などが公表する客観的な統計データによる評価と、企業経営者へのアンケート評価を組み合わせている。国内総生産(GDP)などの統計データの評価は16位だが、経営者の主観で答えるアンケートで自国に対する評価が低く、合算すると35位になっている」

「これは経営者を含む日本人が非常に謙虚で、自己評価に厳しいということの表れである。違う視点で見るとそれだけ自信を失っている。世界の国で日本人のように控えめに謙虚に自分を評価する国がいくつあるか。自己肯定的な国は山ほどある。そういう国は自己主張しないと遅れていくので必死だ」

「過度に謙虚な姿勢は弱腰とみられる。相手は謙虚な人とは判断しないため、国際競争力では不利になる。謙虚さは強さと自信に裏打ちされたものでないといけない。相手から見下されると、自信がないと思われる」

――「謙虚は美徳」は日本企業の伝統的な習慣として根付き、上意下達の風土にもなっていた。なかなか変えられないのはなぜだろうか。

「謙虚さや律義さは大事だ。日本人は昔から製造業で納期をしっかり守り、信頼されている。ただ、モノやサービスを売るだけでは勝てない。100%完璧を求めすぎている」

「日本は島国で長く鎖国時代があった。攻められるリスクがないため、自分を大きく見せる必要はない。中国や韓国は攻められた歴史があり、常に強い姿勢で臨んでおり、迫力がある。ビジネスの交渉現場でも威圧感は大事だ。日本人は謙虚さを捨てる必要がある」

岡藤氏は日本がものづくり大国という考えは時代錯誤と指摘する

――謙虚さを捨てるだけで、日本は世界で勝てるだろうか。

「以前は世界が驚く日本製品が多かった。今は世界を席巻したソニーの『ウォークマン』のような商品は見当たらない。技術が衰えているわけではない。日本人は優秀な頭脳とお金を川上と川中に集中し過ぎているのが課題だ」

「日本企業の多くは素材や部品を作っている。最終製品に仕上げるのは米国であり、中国や韓国だ。日本企業の取り組みは、消費者が目に見える形で表に出ない。欧州の高級ホテルに行くと、昔はテレビはソニーやパナソニックだったが、韓国のサムスン電子やLG電子に変わった。海外に日本製品がないと、負けた気持ちになる」

「日本は『ものづくり大国』と言われてきたが、時代感覚がずれている。グーグルやメタなどテック企業のように、ITで稼ぐことが重要になる。ハードからソフトへ移行することが求められる」』

この後、朝型勤務、出生率、米大統領選について話が続きます。続きは来月に…


Vol.146 2024年2月号

2024年02月01日

2月になりました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか?
今月も元気に経営サポート隊通信をお届けいたします!

 

【河合由紀子のちょっとイイ話】

今月は12月に取り上げました、日経ビジネス電子版の記事『アマゾンのジェフ・ベゾスがウォルマート創業者から盗んだアイデア』(2023.8.18)の続きをご紹介したいと思います。(先月にご紹介する予定でしたが、年始のご挨拶の記事を掲載いたしましたので、今月にご紹介させていただきます。)

『自前で物流網を持つことへのこだわりもウォルマートが手本といえます。ウォルトンはウォルマートの物流の優位性についてこの本でこう述べています。「率直にいって、わが社の物流システムは、小売業界はもちろん、他の多くの業界からも羨望の目で見られている。……わが社の店舗が取り扱う商品は八万品目を超えるが、これら商品の85%を自社の物流センターから直接補充している。……その結果、各店がコンピュータで商品を発注してから実際に納品されるまでにかかる日数は、他社が一般的に5日以上であるのに対し、わが社では平均わずか2日である」ウォルマートは自前の物流システムを構築することで、時間だけでなくコストも削減しました。物流コストを低減することで、「仮に同じ商品を同じ売価で売ったとすれば、わが社は他社より1.5~2%も余分に利益が出る計算になる」とウォルトンは述べています。アマゾンも自前の物流センターを持つことで、配送スピードでライバルのネット小売りに対して圧倒的な優位性を持つようになりました。創業期に資金が足りなかった多くのネット小売りが物流をアウトソーシングしたのとは対照的ですが、配送に時間がかかる米国では際立った競争力になりました。しかもアマゾンはロボットなども活用して低コストで効率的な物流システムを実現しており、低価格で商品を売っても利益が得られる体制を構築しました。

このほかにも経営陣が自由に経営しやすいように労働組合をなるべく作らせないようにする一方で、従業員には自社株を付与して(ウォルマートでは株式購入優先権)会社と一体感を持たせ、株価の上昇で報いる仕組みを導入するなど、両社の類似点は枚挙にいとまがありません。べゾスはウォルトンの経営手法に心酔していました。べゾスから私のウォルマート商法をもらった人物によると、「優れたアイデアを競争相手から拝借する」というくだりに下線が引いてあったそうです。ウォルマートの経営ノウハウを取り入れるために、べゾスは同社の経営人材も引き抜きました。それがリック・ダルゼルです。ウォルマートのIT部門の幹部でしたが、1997年に創業期のアマゾンに入社し、2007年11月までアマゾンのCIO(最高情報責任者)や上級副社長を務めました。アマゾンの成長を支えるテクノロジーやソフトウエア、サービスの基盤を構築するという重要な役割を担いました。

ウォルトンの著書からべゾスが学べることはほかにもありました。巨大企業になったときに社会から受ける猛烈な反発とどう向き合うかです。ウォルマートの成長と歩調を合わせて、多くの小規模店が廃業するようになります。ウォルマートは「よきアメリカの田舎町を破壊する敵だ」と非難され、目の敵にされるようになりました。「完全に成功した大企業になると、突然敵役にされるのだ。というのも、どうやら誰もが、トップに立つものを打ち落とすことが好きらしいからである」。このようにウォルトンは述べています。アマゾンも急成長を続けて大成功を収めるようになると、小売業の“破壊者”と見なされるようになりました。アマゾンの収益拡大などの影響を受けて業績が悪化しそうな米国の小売関連の上場企業54社以上を対象にした「デス・バイ・アマゾン(アマゾン恐怖銘柄指数)」も生まれたほどです。アマゾンの物流拠点における労働環境が批判され、労働組合を結成しようとする一部の従業員の動きも注目を浴びるようになりました。かつてのウォルマートと同じように、強大になったアマゾンも社会に受け入れられ、愛される企業になることが求められています。

ウォルトンはこの本の最後でアマゾンの登場を暗示するような言葉を述べていました。「ウォルマートのようなサクセス・ストーリーは、今の時代でも可能なのか? もちろん可能だ、というのが私の答えだ。今この瞬間にも、素晴らしい発想をもった誰か、何万人もの人々が、成功への道に向かって歩み始めている。何としてもそれを達成したいという情熱さえあれば、成功は何度でも起こり得る。必要なのは経営について絶えず学び、絶えず疑問を抱く姿勢とそれを実行する意欲だけである」 経営について絶えず学び、疑問を抱く姿勢を持ち続ける一方で、強烈な実行力も持ち合わせたべゾスは、ウォルマートをはるかに凌駕する株式時価総額を誇る巨大企業にアマゾンを育てました。』


Vol.145 2024年1月号

2024年01月09日

明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
皆さまにとって2024年が素敵な年になりますように!!

 

【河合由紀子のちょっとイイ話】

年の初めに当たり、皆さまどのようなことをされますか?

初詣、お年玉、お節料理、年賀状、かるた取り、こま回し、凧揚げ、書初め…。お正月といえば、ということで思い浮かぶことを挙げてみましたが、子どもの遊びは最近は変わってきているのかもしれません。私の小さいころは、お正月は大人はゆっくりしているので、時間を持て余してトランプやUNOなどカードゲームばかりしていたような記憶があります。

子どものころは1年がなかなか過ぎず、早く時間が経って大人になりたいなどと思っていたものですが、大人になってみると、本当に1年過ぎるのがあっという間で、1年どころかすぐに5年10年と経っていきます。だからせめて年に1回お正月には強制的に未来のことを考えるようにしています。

人生100年時代と言われていますが、私にはあと何年あるのだろう。というところから思考をはじめ、この世を去る時、どんな人だったと言ってもらいたいかを考えます。その時々で変わることもありますし、変わらないこともあります。人には色々な側面がありますから、それぞれの側面から考えると整理しやすくなります。例えば私は女性であり、母であり、妻であり、娘であり、姉であり、友人であり、税理士であり、上司であります。他にももっとあるかもしれません。そして将来なくなる役割もあれば新たな役割が加わるかもしれません。ただ現時点で持っている役割の中で、今どの役割にたくさん時間を割いているのか、将来はどのような役割が多くなると思われるのか、といったことを整理しながら考えて、今生きている人生から将来のイメージを描きます。例えば私なら、この世を去る時どんな母であったと言われたいか、どんな妻だったと言われたいか、どんな仕事をする人だったと言われたいかなどなど、すべての役割にたいしてどんな〇〇だったと言われたいかを考えます。そしてそのような「私」にたどり着くために、今何ができるのかを考えます。そのうえで、これから3年間で達成したい目標を考え、さらにそれを1年ごとに考えます。

確かなことは、人間には必ずこの世を去る時がくるということです。日々元気に生きていると、ついつい忘れてしまいがち、というより常に考えていたら楽しく生きていけないので考えないようにできているのかもしれませんが、たまには立ち止まって考えることが、明日からの活動の原点になるのではないでしょうか。
企業経営も同じです。ただ、企業は承継されれば人間より長く生きることができます。企業を長生きさせることができるかどうかは、日々の経営者の判断にかかっています。その方向性を見直す機会を1年に1度は設けられることを強くお勧めします。

カワイ税理士法人では、お客様が自社を見つめなおし将来を考えられる際のお手伝いをしております。日々の業務に追われてあっという間に毎日が過ぎていく…。なかなかそんな時間はとれない…。とお考えの方も、1日だけ自社あるいはご自身と向き合う時間をとってみてください。今考えられていることがすっきりし、将来を描くことができ、明日から何をするかにつながります。良い一年のスタートを!!


Vol.144 2023年12月号

2023年12月01日

12月なりました。
今年も残り1月です!今年のことは今年のうちに!
それでは、今月も元気に経営サポート隊通信をお届け致します!

 

【河合由紀子のちょっとイイ話】

今月は日経ビジネス電子版の『アマゾンのジェフ・ベゾスがウォルマート創業者から盗んだアイデア』(2023.8.18)という記事から抜粋してお届けいたします。

『ベゾスが愛読する経営書には、経営学者などが著した理論的な本が目立ちますが、その中にあって、やや異彩を放つのが、米ウォルマートの創業者、サム・ウォルトンの自伝『私のウォルマート商法 すべて小さく考えよ』(講談社)です。アマゾンが小売りの世界を激変させる巨大企業に成長するまで、米ウォルマートは世界一の小売りとして君臨してきました。ウォルマートの2023年1月期の売上高は6113億ドル(約86兆円)にも達します。しかしアマゾンも2022年12月期の売上高が5139億ドル(約72兆円)と猛追しており、ウォルマートを抜くのは時間の問題といわれています。べゾスはアマゾンを起業する際にウォルマートを研究しました。とりわけ創業者のサム・ウォルトンの自伝で、自身のリーダー論を語っているこの本から多くのことを学びました。

まずアマゾンが社是とする「顧客第一主義」はウォルマートの基本理念です。ウォルマートは「EDLP(毎日低価格)」を掲げ、ライバルと比べて常に安い価格を提供する方針で驚異的な成長を遂げてきました。価格だけでなくサービス面でも最先端を走り続けており、例えば、顧客が商品を気に入らなかった際に簡単に返品できる仕組みは有名です。いつどんな商品を買っても安い、顧客本位で高水準のサービスを常に提供する、といった極めてベーシックながらも重要な価値を提供していることがウォルマートの強みです。それを見抜いたべゾスは、インターネット小売りの世界で同じ戦略を実行することを決意します。 インターネットが普及すると商品の価格比較がどんどん容易になるため、安くなければ生き残れないことに気づいていたからです。日本では「価格.com」が有名ですが、もちろん米国にも同様のサービスがあります。2005年に米シアトルの本社でインタビューした際に、べゾスが次のように語っていたのが印象的でした。「私は世界がもっと“透明”になっていくと信じている。消費者は過去と比べてはるかにたくさんの情報を得られるようになり、どんどん賢くなっている。私の理想は、消費者が世界のあらゆる情報を完璧に得られるようになっても、『アマゾンで買いたい』と選んでもらえるようにすることだ」

アマゾンがウォルマートを参考にしていると感じる点は、顧客第一主義だけではもちろんありません。「倹約主義」もそうです。私のウォルマート商法には、サム・ウォルトンの時代は、出張でホテルを使う際は複数の社員が同じ部屋に宿泊していたと書かれています。ウォルトンは従業員に質素倹約を徹底させていました。そこまでではなくてもアマゾンの倹約主義も有名です。例えば、創業期に使われるようになった「ドア・デスク」。ホームセンターに行って、オフィスで使うデスクを買おうとしたところ、ドアの方が安かったので、ベゾスはそれを買って4本の足をつけてデスク代わりにしたという話です。「ドア・デスク」はアマゾンの中心的な価値の1つである“倹約”の象徴となり、倹約のアイデアを生み出した社員にドア・デスク賞が贈られるようになりました。アマゾンでは、出張時の飛行機は幹部でもエコノミークラスを使うことになっていました。』

ゼロから全く新しいものを生み出すのはとても難しいことですが、柔軟な発想のもと、すでにある成功を参考にして何かを組み合わせ、新しい価値を生み出すことは、ゼロをイチにするほど難しくないことなのかもしれません。続きも興味深いので、次号に引き続き掲載します。


Vol.143 2023年11月号

2023年11月01日

11月になりました。
今年も残り2ヶ月です!今年のことは今年のうちに!
それでは、今月も元気に経営サポート隊通信をお届け致します!

 

【河合由紀子のちょっとイイ話】

(『「なぜそれを知っている?」 顧客を驚かせる会社キーエンス』西岡杏 2023.10.16)

今月は日経ビジネス電子版から、キーエンスの記事をお届けしたいと思います。

『2021年冬、工作機械用の部品を手掛けるエーワン精密の山梨工場で、「レーザーマーカー」と呼ばれる装置が故障した。金属や樹脂などにレーザー光を照射して、番号やバーコードなどを刻印するための装置だ。エーワン精密は「コレットチャック」と呼ばれる部品で国内シェア60%を占める最大手。コレットチャックは「旋盤」という工作機械において、加工物や工具を固定する役割を果たす。使用する旋盤や加工物、工具それぞれの種類や大きさに応じてコレットチャックに求められる仕様は異なるため、エーワン精密の生産は「少量多品種」の極みだ。どのコレットチャックがどんな仕様かを見分けるために、レーザーマーカーによる刻印は不可欠だ。

「これまで通り、パナソニック製のレーザーマーカーを購入しよう」。エーワン精密の室田武師専務取締役は既存の生産ラインとの相性を考慮し、同じメーカーのものを選ぶつもりだった。ところが、思いがけない人物が室田氏に声をかけてきた。キーエンスの営業担当者だ。「レーザーマーカーを購入されるご予定ですか」。まるで故障を知っていたかのようなタイミングに、室田氏は驚きを隠せなかった。

種明かしをすれば単純な話だ。この営業担当者は室田氏を訪ねる直前、エーワン精密の別部署でレーザーマーカーの販売を終えていた。その去り際、いつもの習慣でこう尋ねた。「他にお困りの方はいませんか?」。それに対する答えが、営業担当者を隣の建屋に向かわせたのだった。

それからの動きは速かった。数日後に再び来訪。1分ほどで自らレーザーマーカーの準備を整え、室田氏の目の前でデモを披露した。訓練を積んだ口調で機能を紹介し、質問への返事もよどみない。納得した室田氏は、その場で購入を決断した。パナソニックには、故障直後に連絡を入れ、購入意向を伝えていた。だが、パナソニックの営業担当者が電話をかけてきたのはキーエンス製のレーザーマーカーを購入した後だった。

訓練された営業担当者が常に需要を探り続け、チャンスとみたら電光石火で勝負をかける。エーワン精密の山梨工場での受注は、決して偶然ではない。こんなシェア奪取劇が世界中で起きていることを、キーエンスの業績がはっきりと示している。

22年3月期の売上高は過去最高の7552億円で、10年前の4倍近くにまで拡大した。営業利益も過去最高で、売上高に対する営業利益の比率はメーカーとして驚異の55.4%に達する。新型コロナウイルス禍での投資抑制の影響を受けて一時足踏みしたものの、ほぼ右肩上がりで成長を続けてきた。それも、営業利益率が50%前後という高い収益性を維持しながらだ。』

顧客が必要なタイミングでの営業、的確な提案、素早い対応、豊富な製品知識、商品を購入する立場からはいずれもうれしいことばかりですが、販売する立場になれば実は実際に実現することは難しいことばかりです。記事を読んでいて、その営業の鮮やかさに感嘆してしまいましたので、来月もこの記事の残りの部分を紹介したいと思います。


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