Vol.119 2021年11月号
2021年11月01日
今年も残り2ヶ月となりました。
今月も経営サポート隊通信を元気にお届けいたします!
【河合由紀子のちょっとイイ話】
今月は日経ビジネスオンラインの記事から、AI翻訳機「ポケトーク」などで知られる
東証一部上場のソースネクスト会長松田憲幸氏のインタビュー記事を一部ご紹介したいと思います。
『―2012年に米シリコンバレーに移住して9年。そんな松田さんの目に、コロナ下の日本と米国の違いはどう映りますか。
松田:コロナ前も今も、アメリカ人は楽観的で笑顔が多い。日本に帰るとコロナの状況が永遠に良くならないのではないかと感じられるくらい、暗いニュースばかりが流れている。だから私は、日本の家にテレビは置いていません。アメリカの株価が上がり続けているのも、「今よりもっといい未来が来る」とみんなが考えているからです。アメリカにいると、何でも実現できるような気がしてくる。私がアメリカに来て、一番学んだのはその精神です。周りの普通の人がどんどん成功していくのを見ていると、自分もできるんじゃないかと思えてくるのです。
―なぜ違うのでしょう。
松田:子供の教育では、日本人はみんなと同じにするのがいいという考え方を大切にしますが、アメリカ人はいかに他者と差異化するかという考え方を教えます。「なぜあなたはこれができないの」と追及はしない。それぞれが、それぞれの夢を持っている。大きな夢を公言してもばかにされません。「(フェイスブック創業者の)マーク・ザッカーバーグみたいになる」とアメリカ人は平気で言いますが、日本でそんなことを言ったら「無理に決まっているじゃないか」と笑われるでしょう。また、米国人は「Congratulations(コングラチュレーション)」という言葉をよく使います。例えば初対面の人にソースネクストの事業の変遷を説明すると、「IPO(新規株式公開)おめでとう」と言われる。日本ではIPOをした直後なら「上場おめでとう」と言うけれど、10年以上も前のIPOのことを今さらたたえないですよね。でも、アメリカでは称賛される。「Congratulations」の裏には、「いずれ自分もそうなってみせます」という気持ちが確実にありますね。アメリカは広いので一概にはくくれませんが、ここシリコンバレーでは、物事に限界はないとみんなが思っています。
―松田さんも限界を取り外すことができましたか。
松田:ええ。やはり、身近な会社がどんどん大きくなりますからね。料理の宅配を手がけるドアダッシュの創業者トニー・シューと知り合った13年、彼は自分で配達もしていました。私の家に配達に来ると、必ず後で「今日利用してみて、どう思う?」とメールが来る。「日本食レストランがないよね」と言うと、いつの間にかちゃんと入っている。そんなやり取りをしているうち、あれよあれよという間に何千店、何万店の飲食店と提携し、昨年株式上場して時価総額が6兆円にもなりました。そんな例が山ほどあります。その辺を歩いている人がいきなり1兆円企業をつくってしまうのですから、ソースネクストも、せめて1000億円企業になってもおかしくない。そう思えるようになって17年12月にAI通訳機「ポケトーク」を発売したら、時価総額が1000億円を突破した。「俺にもできるんじゃないか」と思うことはやはりすごく重要ですよね。』
ポケトークは数年前にある社長様からご紹介いただき、実際に使ってみたこともあります。驚いたのは、オンラインで使うための通信費用が2年間無料で使えるようになっていることです。これはWi-Fiに繋いだりスマホにデザリングする必要がなく、海外にそれだけ持って行っても使えるということです。定額の支払いが発生すれば、試してみることを躊躇する人も多いのではないかと思うのですが、その障壁をなくすことにより手軽に始められ、その良さがわかってもらえれば継続して使ってもらえるというのが狙いだと思います。翻訳機能は素晴らしく、さすがにコテコテの関西弁は翻訳してくれませんが、それは人間の通訳でも同じことだと思いますので、かなりの精度だと感じました。インタビューの中で松田氏が答えているように、アメリカでは、できないことよりもできること、悪い面より良い面にフォーカスを当てる人が多いように思います。それは社会全体の空気や小さなころからそのような教育を受けているからだと感じます。メリットもデメリットもあるとは思いますが、イノベーションを起こすには良い風土だと思います。