Vol.53 2016年5月号
2016年05月02日
こんにちは!!
風の心地よい爽やかな季節になってきました。
皆さまお元気でお過ごしでしょうか?
【河合由紀子のちょっとイイ話】
日本の自動車メーカーの雄・マツダの快進撃が続いています。魅力的な名車を排出しつつも、一時期深刻な経営危機に直面した同社は、いかにして再生を果たしたのでしょうか。
『マツダが現在評価されている要因は、1つは「スカイアクティブ・テクノロジー」という新技術群の成果だと思います。これは、社運を賭け10年がかりで取り組んできた抜本的な技術改革によって生まれたものです。これまでの常識に囚われず、あらゆる制約を外し、ゼロベースで理想の車づくりを追求して、マツダ車のすべての要素をつくり変えたのです。もう一つはデザインです。マツダの最近の車はすべて、「魂動(こどう)」というデザイン・コンセプトで統一しているんです。「魂動」のデザインに刷新する際に、私がデザイナーに注文したことは2つありました。1つは見た目に格好いいこと。もう1つは一目見てマツダと分かるデザインであることです。
思い切った改革のためには、私どもの経営に対する考え方も大きく変える必要がありました。その柱となったのが「ブランド価値経営」です。マツダならではの独自の価値を提供して、お客様から愛され続ける唯一のブランドとして生きていくことを決意したのです。規模の拡大ではなく、お客様にとっての価値、つまりブランド価値の拡大をビジネスの中心に据えた経営に転換したわけです。
当社は長年、トヨタさん、ホンダさん、日産さんといったビッグプレーヤーに負けまいとして、彼らに追いつき追い越せという思いで頑張ってまいりました。規模の拡大を最優先に、ビッグプレーヤーと同じだけのラインナップを揃えようとしたわけですが、実情は品揃えだけで手いっぱいで、すべてを競争力の強い商品にするだけの力はありませんでした。そこで何が起きたかといいますと、短期的に販売台数を達成するために、ディーラーに車を押し込む。ディーラーは無理な値引きをしてでもお客様に売り込む。その結果ブランドが傷つき、経営が悪化する。バブル崩壊後の1990年代には、マツダのブランドイメージは大きく失墜していました。その結果、平成8年にアメリカのフォード社主導で経営が行われることになったのです。フォードは、私どもが当時行っていたものよりも分析的、科学的なマーケティングや優れた財務システムを導入してくれ、さらにブランド価値の向上を経営課題の中核に据えてくれました。ここから平成12年に打ち出されたマツダの新しいグローバルブランド戦略が「Zoom-Zoom」でした。これが再生に向けた大きな節目になりました。これは日本の子供がいう「ブーブー」と同じ意味合いの英語の幼児語で、子供の頃に感じた動くことへの感動やワクワク感を表します。際立つデザイン、意のままの走り、考え抜かれた機能を通じて、子供の頃に感じた心ときめく体験をお客様にお届けしたい。これをマツダの核となる提供価値と定めたのです。…』
マツダの快進撃は、規模ではなくブランド価値を中心に考え始めたのをきっかけに始まったことがよくわかります。








