経営サポート隊通信 | 大阪の経営支援ならプラス・パートナー
今月の金言
今月の金言

2024年6月の金言

2024年06月03日


Vol.150 2024年6月号

2024年06月03日

蒸し暑い季節になってきましたが
皆さまいかがお過ごしでしょうか?
今月も元気に経営サポート隊通信をお届けいたします。

 

【河合由紀子のちょっとイイ話】

今月は、日経ビジネス電子版から『「なぜそれを知っている?」顧客を驚かせる会社キーエンス」(2023.10.16西岡杏(日経ビジネス記者))の続きをご紹介したいと思います。

『千葉県にある溶接加工会社の担当者も、キーエンスの営業担当者に驚かされた一人だ。ある日、突然キーエンスの営業担当者から「工場の設備が動かないそうですね」と連絡がきた。確かに設備が停止したばかりだったが、なぜそれを把握しているのか。実は、キーエンスに訪問を促したのは石川県小松市にあるロボットシステム開発会社、メカトロ・アソシエーツの酒井良明社長。キーエンスの装置を使ってこの溶接加工会社の設備を構築した企業だ。地方に拠点を構えるため、急な故障には対応できないこともある。そんな機会も逃さないのがキーエンスだ。「ちょっと見に行ってくれないかな」。千葉県のキーエンスの担当者は、酒井社長のなじみの金沢営業所の担当者から連絡を受けるやいなや、現場に急行した。代理店を挟むと調整などで数日かかることもあり、ここまでスムーズに進むのはまれだ。「キーエンスの担当者は客先に同行して営業もしてくれるし、メンテナンスもしてくれる。取引先ではあるけど、一緒に働く仲間のようなものだね」と酒井社長は笑みを浮かべる。もちろんキーエンス担当者は、故障を直した後にこう聞くことを忘れない。「他にお困りのことはありませんか?」

「○○さんは、最近どちらにいらっしゃるんですか」。ガラス大手AGCの「AGC横浜テクニカルセンター」で生産技術を担当する男性は、キーエンスの営業担当者が発する一言に時々ドキリとさせられる。何気なく人事異動や投資計画を聞き出そうとするその様子を、ライバルは嫉妬心も込めて「産業スパイのようだ」と表現する。聞き方こそ礼儀正しいが、裏側にある意図ははっきりしている。購買や投資判断に関わるキーパーソンの動向を把握することだ。キーパーソンの異動先の地域を担当するキーエンス社員とその情報を共有すれば、次の商品の売り込みが容易になる。その異動先が海外だとしても一緒だ。自身の営業成績につながらないとしても、会社全体の受注が増えればボーナスとして跳ね返ってくる。AGCレベルの大企業だと、キーエンスの各事業部の営業担当者が常に目を配り、電話やメールでまめに接触する。いつしか、横浜テクニカルセンターで生産技術を担当する数百人規模の社員のうち、約半数がキーエンスと何らかの接点を持つようになったという。AGC社内の情報にも深く通じているため、AGCの技術者は「キーエンスの社内にシステムがあって、共有されているのでは?」と不思議がる。その想像は当たっている。キーエンスでは、情報を可視化して共有するのが当たり前。もちろん顧客の了承が前提となるが、営業担当者がいつ誰と会い、何を話したかといった情報は、上司だけでなく、同じ顧客を抱える営業担当者とも共有する。だから顧客はキーエンスの情報の網から逃れられない。AGCの担当者は「キーエンスは営業担当者の商品知識もずぬけている。現場で競合の商品の使い方すら懇切丁寧に教えてくれるので、ついつい相談してしまう」と話す。顧客に「依存心」すら抱かせてしまうキーエンスは、じわりじわりと勢力を拡大している。』

社内の顧客情報を共有することを徹底し、共に課題を解決することにより、取引先という立場から一歩顧客に近い、いわば信頼できるパートナーという位置づけを獲得していく形は、取引先にとっていつのまにかなくてはならない存在となり、それが好業績につながっているといえます。

来月はキーエンスの想像を超える提案力の例をご紹介いたします。


2024年5月の金言

2024年05月01日


Vol.149 2024年5月号

2024年05月01日

皆さんいかがおすごしでしょうか?
今月も元気に経営サポート隊通信をお届けいたします!

 

【河合由紀子のちょっとイイ話】

今月は、少し古い記事ですが、日経ビジネス電子版から『「なぜそれを知っている?」顧客を驚かせる会社キーエンス」(2023.10.16西岡杏(日経ビジネス記者))をご紹介したいと思います。

『1974年の設立以来、主力にしてきたのはセンサーを中心とした業務用の電子機器。製造現場で異常を発見したり、生産性を高めたりするために使うものだ。工場の自動化(FA:ファクトリーオートメーション)の進展とともに事業領域を広げ、バーコードなどを読み取るハンディターミナルやロボットビジョン(ロボットと組み合わせて検査などに使うカメラシステム)などでも存在感を高めてきた。とはいえ、工場や倉庫、研究所に出入りする人でなければ、キーエンスの商品を目にする機会はほとんどないだろう。

商品はハイスペック一辺倒ではなく、意外なものを組み合わせる斬新なアイデアを特徴とするものも多い。例えば、自動化した生産設備で制御を担うプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)。キーエンスは2019年、世界で初めてPLCに「ドライブレコーダー」機能を搭載した。クルマで事故が起こったときに状況を確認できるのと同様に、PLCを搭載する設備の稼働実績やカメラ映像などをくまなく記録し、後から確認できるようにした。

設備に起きた不慮のトラブルを詳細に分析するのに役立つ新機能は中小製造業の心を捉えた。このPLCは大ヒットとなり、今では三菱電機などの競合メーカーもPLCにドライブレコーダー機能を加えられるようにしている。

原理はそれほど難しくなくても、キーエンスが真っ先に商品アイデアを思いついた例は珍しくない。1万種類以上とも言われる商品を手掛けるキーエンスは、新商品の約7割が「世界初」あるいは「業界初」だと豪語する。

他にない機能を持つ商品が高く売れるのは当然だ。キーエンスの商品の粗利は約8割とされる。原価2000円の商品を1万円で売っている計算だ。

そんな商品を顧客の手元に届け、価値を感じてもらう原動力になっているのが、キーエンスの代名詞ともいえる「直接営業」だ。三菱電機やオムロンといったFA機器の競合メーカーが代理店を使った間接営業を主軸にするのとは対照的に、キーエンスは社員が営業担当として顧客企業を直接訪ね歩く。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の小宮知希シニアアナリストの試算によると、キーエンスの社員1人当たり売上高は8710万円(22年3月期)。代理店によるサポートがない分、不利になりそうなものだが、オムロンの工場向け制御機器事業の4482万円(同)に比べて約2倍という効率の高さだ。

19年秋にキーエンス製品を導入したクボタは、商談の展開スピードに驚いた。クボタは農機や建機のエンジン製造工程で使うロボットビジョンの導入を検討し、数社に見積もりを依頼した。代理店を挟むメーカーでは回答に1週間かかるところもあったが、キーエンスは即日回答。翌日には大阪市内のラボでの試用まで提案してきた。クボタ生産技術統括部の竹野陽山・第一課長は「圧倒的な速さだった」と舌を巻く。

兵庫県宝塚市で電子機器を生産するニッシンの役員は「ウェブサイトから商品カタログをダウンロードした1時間後に、突然電話がかかってきた」と打ち明ける。キーエンスに「待ち」の姿勢はない。顧客の興味の兆しが見えた途端にアプローチし、自らのペースに巻き込んでいく。』

一人当たりの売上がずば抜けて高く、社員の平均給与は2000万円超と言われるキーエンス。その効率の良さの秘密はどこにあるのでしょう。続きは来月号でお届けします。


2024年4月の金言

2024年04月01日


Vol.148 2024年4月号

2024年04月01日

ようやく日差しが暖かくなってきました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか?
今月も元気に経営サポート隊通信をお届けいたします!

 

【河合由紀子のちょっとイイ話】

今月は先月に引き続き、2024年2月10日日経新聞掲載の、伊藤忠商事会長岡藤正広氏のインタビュー記事『「謙虚は美徳」もう古い 伊藤忠会長CEOが喝』を取り上げたいと思います(一部編集)。

『「優秀な人材を海外企業に奪われないようにすることも重要だ。(世界水準に近づくように)賃上げを進めていく必要がある。我々は24年に全社平均で6%の賃上げを目指す。初任給は5万円アップを実現したい。我々が頑張れば、日本企業の底上げができるはずだ。22年までの10年間で、日本企業の人件費は16兆円増えた。一方で企業の収入は74兆円増え、株主配当は19兆円増えている。人材教育に投資をする余力は大きい。」

伊藤忠商事は残業が当たり前だったが、岡藤氏は社長就任後にトップダウンで朝型勤務に切り替えた。午後8時以降の勤務を原則禁止にして社員の意識を変えた。残業禁止まで行ったが、業績にマイナスの影響も出るのではとの懸念もあるが?

「日本の伝統的な働き方が、競争力を下げてきたと私は思う。一方、我々は少数精鋭で生産性を上げることに特化してきた。そのためには、朝型勤務が効果的だった。日本企業はフレックスタイムが主流で、早く来る時もあれば遅く来る時もある。午前10時に出社した人は新聞を読みコーヒーを飲んで10時半になり、昼ご飯に行く。そういう社員に限り、午後8時まで残業している。私は午前6時前に出社し、昼も食堂に行かず自室でファミリーマートの弁当を15分で食べ、午後3時ごろにいったん自宅に帰る。午後5時から会食に向かい、午後8時には帰宅する。とても効率が良い働き方だ。」

また、岡藤氏は働き方改革こそ少子化対策と説く。

「働き方改革は出生率向上にもつながっている。実は伊藤忠社員の21年度の出生率は1.97だ。この数値は日本の出生率1.30を大きく上回っている。働き方改革を始めた10年度は、出生率は0.94しかなかった。働き方を見直したことで生産性が上がり、プライベートの時間を確保できるようになった。日本企業は働き方改革について、楽をするために行う取り組みだと考えがちだ。生産性を高めるためだと徹底して行えば、結果的に社員も幸せになる。少子化は恐れるべからずだ。」

岡藤氏は、商社で万年4位だった伊藤忠を三菱商事や三井物産と争うまでに成長させた。時価総額が10兆円に上り、存在感から市場では「岡藤プレミアム」ともいわれる。岡藤氏の約14年に上るトップ在任期間で、伊藤忠商事の時価総額は10兆円と約8倍に増えた。日本が「失われた30年」と言われる時代に成長できたのは、モーレツなど旧来の習慣の断絶で活力を取り戻したことにあると岡藤氏は自己評価している。

朝型勤務や社員の出生率を指標にするなどの働き方改革は、大手商社でも群を抜く。働き方改革を業績向上にいかに結びつけるか、いまだ試行錯誤している企業は多い。「生産性を高めるためだと、徹底することが大事だ」と岡藤氏は説く。また、「謙虚は美徳」の文化も捨てるべき企業気質と断じる。不確実性の中で強さに裏打ちされた自信を示さないと、ビジネスで勝てないと憂う。相次ぐ賃上げなど日本企業はようやく巻き返しに動き出した。岡藤氏がいう強い日本企業を取り戻すために、古い習慣を断つ経営者の覚悟が必要だ。』


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