2024年8月の金言
2024年08月01日
2024年8月の金言
2024年08月01日
Vol.152 2024年8月号
2024年08月01日
蒸し暑い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか?
今月も元気に経営サポート隊通信をお届けいたします!
【河合由紀子のちょっとイイ話】
今月はプレジデントオンラインから元ソフトバンクホークス監督、工藤公康氏の記事『なぜホークスを常勝軍団に替えられたのか…名監督・工藤公康が自分に課していた「選手への声掛け」ルール』をご紹介します。
『2016年に喫した、日本ハムファイターズに大逆転を許してのシーズン2位という結果。私はその失敗の原因を「自身のコミュニケーションの拙さ」にあると考えていました。2015年、就任1年目からリーグ優勝と日本一を果たしたことで、私は「自分のやり方は間違っていなかったのだ」という大きな自信を得ました。しかしその自信は、慢心へとつながることになります。2016年シーズンは、自分の中に少なからず、「私のやり方でやってください。このやり方で、去年も日本一になったじゃないですか。私の言うとおりにやれば勝てるんです」という気持ちがあったのも事実です。今から思えば、おごり以外の何物でもありません。自分でも知らず知らずのうちに、選手やコーチ、トレーナーに対して「私の言うとおりにやってくれればそれでいい」という一方通行のコミュニケーションを押し付けるようになっていたのでした。その年のシーズンオフ。私は反省し、チーム内でのコミュニケーションのあり方を根本から考え直すことになります。ここからは、私がコミュニケーションのあり方をどのように考え直し、実行したかを、具体的にお話ししていきます。
まずお話ししておきたいのは、私は決して、「監督と選手は、何が何でもとことん対話すべきだ」とは考えていないということです。もしかしたら、「普段はあまり選手とコミュニケーションを交わさず、でもいざというときに的確な声を掛けることで、選手のモチベーションやポテンシャルを引き出す」という監督の形もあるのかもしれません。ただ、2016年当時の私には、「選手とどのようにコミュニケーションをとるのが、勝ち続けるチームをつくり上げるために有効なのか」というノウハウがまったくありませんでした。私の中にあったのは、「とにかく今のままではいけない。コミュニケーションのあり方を改めないといけない」という気持ちだけです。ここで記すのは、そんな私が、必死にもがきながらなんとか見出したコミュニケーションです。コミュニケーションのあり方を改めるにしても、どう改めるのか。私が思い至ったのは、「まず、選手のことをもっと知らなければ」ということでした。
就任してから2年目を終えるまでも(つまり私が「コミュニケーションのあり方を考え直さなければ」と思い知る以前も)、私は選手たちに、「話したいことがあったら、いつでも遠慮なく声を掛けてね」とは伝えていました。「選手たちと密にコミュニケーションをとりたい」という気持ち自体は持っていたのです。しかし、進んで私とコミュニケーションをとりにきてくれる選手はごくわずかでした。考えてみれば当然です。こちらがいくら「ウェルカム」の姿勢を示しても、監督は監督。選手にとってみれば上司であり、気を遣う存在です。好き好んで本心を話しにきてくれる選手は、そうそういません。「話したいんだったらきていいよ」という「待ち」のコミュニケーションでは、「選手を知る」という目的は果たせないのです。また、就任当初の2年間は、私のやり方を押し付けていたこともあり、内心で「なんなんだこの監督は」と思われて避けられていた部分もあったのかもしれません。私は、「選手を知るには、監督である自分から、選手に声を掛けて話を聞かなければならないのだ」と考えました。私は選手の何を知りたいと思ったのか。それは、選手の「背景」です。プロ野球選手としての生き方や、練習への姿勢、試合に懸ける思いには、選手の背景が大きく影響します。いつから野球を始めたのか。学生時代はどんなチームでプレーしていたのか。どのようなポジションを守る、どのような打者だったのか。出身地はどこなのか。どのような家族のもとで生まれ育ったのか。どのような性格なのか。奥さまはどのような人で、どのような家庭を築いているのか。日々の生活の中で大切にしていることは何か。今、困っていることは何か。どのような夢を持っているのか。このような、選手の「背景」をひとつでも多く知ることができれば、練習や試合の中で、その選手に合う環境を整えることができ、試合でより高いパフォーマンスを発揮してくれるのではないか。私はそう考えたのです。』
工藤氏がコミュニケーションの取り方を意識的に変えていったことが、具体的にわかります。自己の慢心が招いた監督2シーズン目の大逆転の結果2位。反省した工藤氏は自らを省み、変わっていきます。続きは来月にお届けいたします
2024年7月の金言
2024年07月01日
Vol.151 2024年7月号
2024年07月01日
皆さまいかがお過ごしでしょうか?
今月も元気に経営サポート隊通信をお届けいたします!
【河合由紀子のちょっとイイ話】
今月も、先月に引き続き日経ビジネス電子版の記事からお届けします。(「なぜそれを知っている?」顧客を驚かせる会社キーエンス」2023.10.16西岡杏(日経ビジネス記者))
『「こんなに簡単なんですか? 初見で使えますね!」。「ガーナ」などのチョコレートを製造するロッテ浦和工場(さいたま市)。生産技術の担当者は2018年、キーエンス製の画像センサーの導入を決めた。工場に持ち込まれたデモ機を見るだけで、設定のシンプルさが分かったからだ。
それまでロッテの担当者が悩んでいたのは、検査工程の歩留まりの悪さ。チョコレートの「割れ」や「欠け」を判別する装置を用いていたが、精度が足りずに良品まではじいてしまう状況だった。
そこに声をかけたのが、毎月のように工場を来訪するキーエンスの営業担当者だった。ロッテの担当者は「相談を持ちかけると喜んで応じてくれ、翌週には具体的な提案に仕上げてくるようなスピード感がある」とその姿勢に好感を持った。そして、実際に持ち込んできた提案は、ロッテの想像を超えていた。
歩留まりの悪さという問題の解決に特化するのであれば、判別精度が高い装置に置き換えるのが近道だろう。ところがキーエンスの営業担当者が出してきたのは、高精度にするだけでなく、使いやすさを重視する提案だった。
多くの製造現場では、複雑な装置を作業者が使いこなせず、宝の持ち腐れになっている。「調整が難しい機械は、次第に敬遠されるようになる」。営業担当者はこうした実情をよく理解しているように見えた。
「一握りの専門家だけで考えるのではなく、生産ラインに関わる多くの人の知恵を結集して歩留まりを高めたい」。ロッテが抱えていたそんなニーズを先回りして具体化し、目の前に示したからこそ、キーエンスは自社商品の導入につなげられたわけだ。
先回りして本質を探り当てて解決すれば、大きな価値を提供できる。顧客も気づかない潜在需要こそ、キーエンスにとっては宝の山なのだ。それは、米アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズ氏が「人は形にして見せてもらうまで自分は何が欲しいか分からない」と喝破したのと通じる。
電子部品の雄、村田製作所の中島規巨社長は取引先であるキーエンスの力に脱帽する。「あの会社の付加価値は、もう人。彼らのすごい提案力です。うちの設備を開発している者たちもコロッとやられるんです」
国内トップ3の時価総額、メーカーとして驚異の利益率、そして上場企業の中で屈指の高賃金。キーエンスを表す数字は、日本企業としては突出したものばかりだ。
なぜキーエンスはそれができるのか。その疑問に端的に答えたのが、「キーエンスは仕組みと、それをやり切る風土がすごい」というキーエンスOBの指摘だろう。属人的な意欲や能力に頼ることなく顧客に与える価値を最大化できるように仕組みを整備し、社員はその仕組みに合わせて正しい行動をやり切る。それがキーエンスの強さの根源であり、人材育成の要諦でもある。』
いかがでしたでしょうか?3ヶ月に渡りお届けしましたキーエンスの記事、一人一人はスーパーマンではないけれど、コミュニケーションを着実にして、システム化していくことでチームとして、可能性のある顧客を全て拾っていき、顧客の問題を解決することにより、さらに次の顧客につなげる。資金の多寡の問題ではなく、本気で顧客の問題解決に取り組むことが、いまのキーエンスの発展につながっていると実感した記事でした。
2024年6月の金言
2024年06月03日
Vol.150 2024年6月号
2024年06月03日
蒸し暑い季節になってきましたが
皆さまいかがお過ごしでしょうか?
今月も元気に経営サポート隊通信をお届けいたします。
【河合由紀子のちょっとイイ話】
今月は、日経ビジネス電子版から『「なぜそれを知っている?」顧客を驚かせる会社キーエンス」(2023.10.16西岡杏(日経ビジネス記者))の続きをご紹介したいと思います。
『千葉県にある溶接加工会社の担当者も、キーエンスの営業担当者に驚かされた一人だ。ある日、突然キーエンスの営業担当者から「工場の設備が動かないそうですね」と連絡がきた。確かに設備が停止したばかりだったが、なぜそれを把握しているのか。実は、キーエンスに訪問を促したのは石川県小松市にあるロボットシステム開発会社、メカトロ・アソシエーツの酒井良明社長。キーエンスの装置を使ってこの溶接加工会社の設備を構築した企業だ。地方に拠点を構えるため、急な故障には対応できないこともある。そんな機会も逃さないのがキーエンスだ。「ちょっと見に行ってくれないかな」。千葉県のキーエンスの担当者は、酒井社長のなじみの金沢営業所の担当者から連絡を受けるやいなや、現場に急行した。代理店を挟むと調整などで数日かかることもあり、ここまでスムーズに進むのはまれだ。「キーエンスの担当者は客先に同行して営業もしてくれるし、メンテナンスもしてくれる。取引先ではあるけど、一緒に働く仲間のようなものだね」と酒井社長は笑みを浮かべる。もちろんキーエンス担当者は、故障を直した後にこう聞くことを忘れない。「他にお困りのことはありませんか?」
「○○さんは、最近どちらにいらっしゃるんですか」。ガラス大手AGCの「AGC横浜テクニカルセンター」で生産技術を担当する男性は、キーエンスの営業担当者が発する一言に時々ドキリとさせられる。何気なく人事異動や投資計画を聞き出そうとするその様子を、ライバルは嫉妬心も込めて「産業スパイのようだ」と表現する。聞き方こそ礼儀正しいが、裏側にある意図ははっきりしている。購買や投資判断に関わるキーパーソンの動向を把握することだ。キーパーソンの異動先の地域を担当するキーエンス社員とその情報を共有すれば、次の商品の売り込みが容易になる。その異動先が海外だとしても一緒だ。自身の営業成績につながらないとしても、会社全体の受注が増えればボーナスとして跳ね返ってくる。AGCレベルの大企業だと、キーエンスの各事業部の営業担当者が常に目を配り、電話やメールでまめに接触する。いつしか、横浜テクニカルセンターで生産技術を担当する数百人規模の社員のうち、約半数がキーエンスと何らかの接点を持つようになったという。AGC社内の情報にも深く通じているため、AGCの技術者は「キーエンスの社内にシステムがあって、共有されているのでは?」と不思議がる。その想像は当たっている。キーエンスでは、情報を可視化して共有するのが当たり前。もちろん顧客の了承が前提となるが、営業担当者がいつ誰と会い、何を話したかといった情報は、上司だけでなく、同じ顧客を抱える営業担当者とも共有する。だから顧客はキーエンスの情報の網から逃れられない。AGCの担当者は「キーエンスは営業担当者の商品知識もずぬけている。現場で競合の商品の使い方すら懇切丁寧に教えてくれるので、ついつい相談してしまう」と話す。顧客に「依存心」すら抱かせてしまうキーエンスは、じわりじわりと勢力を拡大している。』
社内の顧客情報を共有することを徹底し、共に課題を解決することにより、取引先という立場から一歩顧客に近い、いわば信頼できるパートナーという位置づけを獲得していく形は、取引先にとっていつのまにかなくてはならない存在となり、それが好業績につながっているといえます。
来月はキーエンスの想像を超える提案力の例をご紹介いたします。
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