Vol.111 2021年3月号
2021年03月01日
皆様お元気でお過ごしでしょうか。
3月になりました。
今月も経営サポート隊通信を元気にお届けいたします!
【河合由紀子のちょっとイイ話】
今月は、ハーバード・ビジネス・スクールの教授であり、「イノベーションのジレンマ」で有名なクレイトン・M・クリステンセンの著書「ジョブ理論」から、一部抜粋してみたいと思います。ジョブ理論とは、簡単に言うと、商品やサービスを開発したり作り直したりする際に用いる考え方で、顧客は商品やサービスを顧客のジョブ(問題や不満など)を片付けるために取り入れる、つまり購入し使用する、というものです。
『世界には洪水のようにデータがあふれているのに、偉大なイノベーターたちを成功に導いたものが、片付けるべきジョブの直観だったと聞くと驚く人もいるかもしれない。ソニーの創業者の盛田昭夫は後進に対し、市場調査に頼るのではなく「人々の生活を注意深く観察して彼らの望みを直観し、それに従って進む」ようにと助言した。世界中にブームを巻き起こしたポータブル音楽カセットプレイヤー〈ウォークマン〉は、市場調査の結果が思わしくなく、一時的に発売が保留にされたことがあった。録音機能がないうえ、イヤホンのわずらわしさを感じる人が多いと思われたからだ。だが盛田は自分の直観を信じ、マーケティング部門の反対を押し切った。ウォークマンは、3億3000万台以上を売り上げ、個人用の携帯音楽プレイヤーという新しい文化を世にもたらした。
自分の生活のなかにある片付けるべきジョブは、イノベーションの種が眠る肥沃な土地だ。人の生活は雄弁に語る。あなたにとって重要なことは、他の人にとってもおそらく重要だ。』
商品やサービスは顧客目線で開発しなければ売れないことはわかっていますが、このジョブ理論はもっと踏み込んだ考え方です。例えば、一緒に暮らす家族の数が少なくなった人向けに、小さめの住宅を販売する会社の例が挙げられています。市場はあるのになかなか売れないため、ショールームの工夫をしたり、たくさんのオプションをつけて顧客が自分好みにアレンジできるようにしますが、それでも売れません。ショールームに来た人に話をよく聞いてみると、ダイニングテーブルをどうするかが購入を躊躇させる鍵になっていたことがわかります。ダイニングテーブルがなぜ問題だったのか、それは単なる家具ではなく、家族が集い、子供が小さいころ宿題をした思い出の場所だったから。そのことに気づいてから、この住宅販売会社は自分たちのビジネスを「新しい家を建てて売るビジネス」から「顧客の人生を移動させるビジネス」ととらえるようになります。そして、ダイニングテーブルを置けるスペースを確保するために、設計変更、引っ越しサービス、家具の保管サービス、内装バリエーションを3つのパターンにして選択する負担を減らすなどの工夫をし、それにより大きな成長を遂げました。
顧客のジョブは何かを考えることにより、これまで見えていなかった、そして顧客も気づいていなかったニーズに気づくことができます。一度、顧客はわが社の商品をどのようなジョブを解決するために取り入れたのか、考えてみると何か違うことが見えてくるかもしれません。