幼い頃から中小企業のお客様と接してきた私は、自然と家業であった祖父の税理士事務所を継ぐことを決意し、2001年税理士登録しました。
税理士になってすぐ、業績の芳しくなかった70代の社長に廃業することをお勧めしました。今から考えれば当時所長だった祖父もよく許してくれたと思います。また、会社を愛し育ててこられた社長にも意地やプライドもあったと思いますが、20代後半の私の言葉をよく聞き入れていただけたと思います。何度も会社に通い、社長を説得し、会社と個人の財産全てを失うという最悪の事態に陥る前に、会社を畳むことができました。社長と奥様にお会いする最後の日、ファミレスでコーヒーをご馳走になりながら、お二人からかけられた一言が今でも心に残っています。
「あなたがあの時やめるように言ってくれて良かった。
あのまま続けていたら大変なことになっていました。本当にありがとう。」
会社を畳まれることが最善の方法だと信じてがむしゃらに動いていた私は、本当にこれで良かったのだろうかと立ち止まりました。業績が悪く、回復の見込みもなれば事業をやめるというのは当たり前かもしれません。しかし、やめなければならない状態に至る前に、何か私にできることは無かったのだろうか。そんな思いが強くなりました。
企業は生き物です。人が集まり、意思決定し、行動し、行動した結果が数字に反映されます。私が税理士として扱ってきたのは、行動された結果が集約された、いわば過去の結果ともいえる通知表でした。しかし、私が当たり前のように作り上げてきた決算書というものが、どれだけの人の意思決定や行動によってできあがってきたものなのかを考えたとき、過去の評価をするのではなく、未来を創るお手伝いをしたいと強く想うようになりました。
我々はどこに向かって行くのか、そのためにどのような意思決定をするのか、意思決定通り行動はできているか、行動した結果目標を達成することができたか、目標を達成できていないとするとその原因は何か、それを推測し、また次の意思決定をして行動する。この繰り返しが企業の業績を押し上げ、良い企業風土を作っていきます。偶然なしえた好業績は再現不可能ですし、もう一度その偶然が起こるのを待っていては厳しい社会を生き残っていくことは不可能でしょう。
私の好きな言葉に、土光敏夫さんの次のような言葉があります。
「計画」とは将来への意思である。
将来への意思は、現在から飛躍し、
無理があり、現実不可能に見えるものでなくてはならない。
現在の延長上にあり、合理的であり、
現実可能な計画はむしろ「予定」と呼ぶべきだろう。
将来への意思としての計画は、 困難を受け入れ、困難に挑み、
困難に打ち勝つモチーフを自らのうちに持たなければならない。
明日が今日の延長線上にあるわけではありません。意思を持ち、一見不可能とも思える事柄にチャレンジすることによって道は拓けるのです。完璧に準備ができてからなんてことを言っていては前には進めません。霧のかかった山の頂上を目指す如く、ゴールの見当をつけてとりあえず進んでみることです。1合目まで上ると、かすかに行く先がどのようになっているか見え、3合目5合目と進むにつれてよりゴールへの焦点が合ってゆくのです。
そんな、チャレンジする不安とワクワク感を共有し、作戦を練り、現状どのような状態になっているかを共に確認して次の一手をまた考える、私たちはお客様の未来を創るためのかけがえのないパートナーでありたいと考えています。
