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経営サポート隊通信
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Vol.126 2022年6月号

2022年06月01日

6月になりました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか?
今月で今年も半分が過ぎますね。
梅雨空も吹き飛ぶよう今月も元気に経営サポート隊通信をお届けいたします!

【河合由紀子のちょっとイイ話】
今月も引き続き、『誰でも「デジタルものづくり」始まった製造業のMaaS(2022.3.25掲載)』の続きをお届けします。

『「大学で機械工学も学んでいなければ、職人さんから技能を盗んだわけでもない。だけど、入社半年もしないうちにプログラムできるようになった」。入社5年目の廣野将太・製造部リーダーにとって、複雑形状のアルミ部品のプログラミングもお手の物だ。「5軸加工」といわれる、XYZ軸だけでなく回転と傾斜の軸を加えてアルミ材料を削っていく技術も手掛ける。オフィスには廣野氏のようなデジタルものづくり時代の申し子がごろごろいる。

エンジニアが作成したプログラムは昼夜問わず機械に送られて加工されるとあって、工場は24時間365日稼働を実現している。工場内はほぼ無人。職人技に依存しない標準化と省人化を進めた結果、2021年の同社の1人当たり生産品目数は760個近くと、02年から2.2倍に増加。生産性は目に見えて上がった。このヒルトップシステムと呼ばれる生産方式は2000年代前半に導入し、少しずつ機能を拡充してきた。そして2021年、その歴史を自ら破壊するほどのイノベーションを打ち立てた。受注から生産までほぼ完全自動化するAIエンジン、COMlogiQ(コムロジック)を完成させたのだ。

コムロジックは3次元の図面データをアップロードすれば、AIがそれを読み込み、機械のNCデータと、そのデータを用いた加工プログラムを自動で生成。使用する工具やセットの仕方、材料の段取りなども指示してくれる。人は「公差」と呼ばれる許容される寸法誤差の値と穴の位置を指示するだけ。到達したのはヒルトップシステムのさらに先を行く「パソコンとネットワーク環境さえあれば誰でも熟練の加工技術を再現できる世界」だ。

AIエンジンはLIGHTz(ライツ、茨城県つくば市)との共同開発だが、このイノベーションを成し遂げたのは、ヒルトップがマスカスタマイゼーションを追究してきたからこそ。同社のサーバーに20年以上眠る多品種少量の膨大な部品データが、AIの完成度を高める“教材”となり、加工モデルを自動生成できるようになった。ヒルトップによると、プログラミングに要する時間は3分の1に短縮され、熟練のエンジニア約30人分の作業を任せられるようになったという。

同社は自社で使うだけでは飽き足らず、22年から工作機械商社の山善と組み外販も始めた。売り切りではなく、基本料金とデータ量に応じた従量課金とを組み合わせて収益化するサービスだ。だが、ここで一つの疑問が湧く。AIによる独自のものづくりを文字通りオープンイノベーション化することは、敵に塩を送ることにならないのか。山本氏は「開放して多くのユーザーに使ってもらうことでコムロジックはより多くの加工データを学び進化する。コムロジックの価値そのものが高まればさらに魅力的なサービスになる」と敵塩など意に介さない。そこにはもはや「モノ売り」ではなく、サービス売りを通して製造業の世界を一新しようとするヒルトップの姿が浮かぶ。製造業MaaSのプロバイダーへと変身することで、自らの企業価値を高めようとしているのだ。

部品加工や設備組み立ての和コーポレーション(新潟県長岡市)はコムロジックを試験導入し、部品加工のモデルづくりに取り組んでいる。担当者は「高度な加工がコムロジックでできるようになれば、生産性や利益率はかなり改善される」と期待する。

山本氏は加工プログラミングという専門職すら今や「ルーティーンワーク」とみなす。では、サービスによってものづくりを完全自動化した後、いったい人は何をするのか。山本氏は「研究開発など、より創造的な仕事にマンパワーを振り向ける。人が本来取り組むべき高い技術や事業の開発など学びのあるものづくりに挑戦する」と唱える。

例えば21年は1時間に12万錠を外観検査できる錠剤検査装置やPCR検査装置などを自前で開発した。これまでヒルトップは1~2個の特殊部品ばかりつくってきただけに、その集合体である装置も丸ごと手掛けられる技術力を持つ。FA(ファクトリーオートメーション)機器などの開発にも成功しており、もはや単なる部品加工メーカーの域を飛び出している。

経済産業省などがまとめた「2021年版ものづくり白書」によると、デジタル技術を活用する上での課題について「デジタル技術導入にかかるノウハウの不足」と回答した企業の割合は約53%に達した。また、約48%が「先導的役割を果たすことができる人材の不足」と答えている。

ヒルトップが目指すデジタル技術を使った「誰でも高度なものづくり」はこれらの課題を打ち破る可能性を秘める。大手ソフトウエアベンダーでも大手自動車メーカーでもない、京都の知られざる町工場発の「MaaS」は、日本の製造業がより付加価値の高いものづくりにシフトできるかの試金石となる。』

地球全体では人口は増加していますが、着実に人口減少時代を迎える日本が今後世界で生き残っていくためには、最新の技術をこれまで培った技術、経験、知識と掛け合わせて、少ない人数でも高収益の出る事業を生み出していくことが一つの答えとして考えられるように思います。そのためにも、日本の希少な資源である人材の育成がますます大切になってくるのではないでしょうか。


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