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経営サポート隊通信
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Vol.124 2022年4月号

2022年04月01日

4月になりました。
そろそろ桜も蕾も膨らみ暖かくなってきますね。
今月も元気に経営サポート隊通信をお届けいたします!

【河合由紀子のちょっとイイ話】
今月は、雑誌『致知』(2012年9月号)から、クリエイティブディレクター佐藤可士和氏のインタビュー記事を抜粋したものをご紹介したいと思います(『ヒット商品を生み出す秘訣』)。

『ヒット商品を生み出すには商品の本質を見抜くことが肝要です。本質を見抜くとはある表層だけではなく、いろいろな角度から物事を観察し、立体的に理解するということです。そのためのアプローチは様々ありますが、中でも僕が最も重要だと思うのは、「前提を疑う」ことです。これは僕のクリエイティブワークの原点ともいえるフランスの美術家、マルセル・デュシャンから学んだことです。
20世紀初頭、皆が一生懸命絵を描いて、次は何派だとか言って競っている時に、デュシャンはその辺に売っている男性用の小便器にサインをして、それに「泉」というタイトルをつけて、美術展に出したんです。キャンバスの中にどんな絵を描くのかということが問われていた時代に、いや、そもそも絵を描く必要があるのかと。見る人にインパクトを与えるために、敢えて便器という鑑賞するものとは程遠いものを提示して、アートの本質とは何かをズバッと示した。つまり、そういう行為自体が作品であると。
ただ、必ずしも前提を否定することが目的ではありません。一度疑ってみたけど、やはり正しかったということも十分あり得るでしょう。大事なのは、「そもそも、これでいいのか?」と、その前提が正しいかどうかを一度検証してみることです。過去の慣習や常識にばかり囚われていては、絶対にそれ以上のアイデアは出てきませんから。
あと一つ挙げるとすれば、「人の話を聞く」ことが本質を見抜く要諦だといえます。相手の言わんとする本意をきちんと聞き出す。僕はそれを問診と言っていますが、プロジェクトを推進していく際はこの問診に多くの時間を割いています。じっくり悩みを聞きながら、相手の抱えている問題を洗い出し、取り組むべき課題を見つけていくのです。
問診にあたっては、自分が常にニュートラルでいること、それが重要です。邪念が入るとダメですね。人間なので好き、嫌いとか気性の合う、合わないは当然あるじゃないですか。ただ、合わない人の言っていることでも正しければ、その意見に従うべきですし、仲のいい人でも間違っていれば「違いますよね」と言うべきでしょう。
感情のままに行動するのではなく、必要かどうかを判断の拠り所とする。いつも本質だけを見ようと思っていれば、判断を間違えることはないでしょう。』

ユニクロ、セブンイレブン、くら寿司、ふじようちえんなど様々な分野でブランド戦略のトータルプロデューサーとして活躍している佐藤可士和氏ですが、どんな分野であってもプロジェクトを成功に導いているのは、物事の本質を中心に取り組む姿勢が根底にあるからなのですね。どのような仕事に従事していても、本質を見極めそれを中心に考え取り組むことは大切なことだと思います。


Vol.123 2022年3月号

2022年03月01日

3月になりました。
そろそろ桜も蕾も膨らみ暖かくなってきますね。
今月も元気に経営サポート隊通信をお届けいたします!

【河合由紀子のちょっとイイ話】
今月は、日経電子版(Mono Trendy 2022年2月9日 一部編集)から、注文から受け取りまで一切人と接しないフルーツオレの専門店の記事をご紹介します。オーダーメイド、非接触、効率的な店舗運営ということ以外に、実験的に実店舗を持つことにより顧客情報を活用し、またBtoBの新規ビジネスにつなげようという試みがうかがえます。

『フルーツオレ専門店「The Label Fruit」は、モバイルオーダーサービスを展開するShowcase Gigと、コインロッカーや通貨幣処理機などを製造・販売するグローリーが、2021年12月に共同で立ち上げた店舗だ。事前にモバイルオーダーで注文しないと、店舗で商品を受け取れない「BOPIS(バイ・オンライン・ピックアップ・イン・ストア)」形態の飲食店だ。出来上がりの商品は店頭に設置したロッカーを介して渡すため、完全に非接触で受け渡しができる。店舗はバックヤードで商品を作るスタッフのみで運営されており、販売スタッフはいない。事前注文から店頭での受け取りまで、客側の一連の流れは簡単だ。まず来店前に、インスタグラムかグーグルマップに表示される店舗のプロフィル画面から、商品の購入ページにアクセスする。商品を選択し、受け取り時間やクレジットカード情報などを設定。注文が完了すると、店舗から商品を受け取る際に必要なQRコードがメールで送られてくる。あとは指定の時間に来店して、店内のロッカーにQRコードを読み込ませ、商品を受け取る。フルーツオレは、味がストロベリーやメロンなど5種類、下地となるミルクが3種類から選べる。さらに、ナタデココや杏仁豆腐などのトッピングが選べ、甘さの度合いも調整可能。価格は税込みで1000円前後だ。商品のラベルもカスタマイズできる。色は12種類、デザインを8種類以上そろえ、名前も記入できる。Z世代はスマホ起点で、あらゆる物事を完結させるのに慣れているので、自分だけの一点モノや、カスタマイズする体験を求めている。そこで、購入体験をより楽しんでもらえるよう、バリエーションの選択肢を増やした。ラベルの色や種類が豊富で、商品自体も色鮮やかなので、推し活やSNS映えの効果も期待できると考えている。また、受け取り場所となる店内からも、体験価値を感じてもらえる仕掛けを施す。ロッカーの扉はモニターになっており、内部からデジタル映像を流せる。商品の人気ランキングや、受け取り時にデザインしたボトルのバーチャル映像を映す。イートインはできないが、撮影スポットとして店内を利用できる。壁には撮影時に役立つ鏡を貼ったり、若年層に人気のネオンサインで飾った。顧客によるSNSへの投稿を誘引し、来店動機やリピーターを生み出す狙いだ。
両社が店舗での体験価値を重視する理由は他にもある。グローリーにとっては、「店舗運営の最適化を検証していく場」である。2年前から、同社ではデータを生かしたビジネスに注力している。The Label Fruitの店内にも、AIカメラやAIビーコンを数台設置し、ユーザーの購買行動を分析していく。混雑する時間帯や需要を推測し、スタッフの適切な配備や需要予測を行い、店舗運営を最適化していく。活用の道は、無駄がない店舗運営だけではない。店内のプロジェクターからコンテンツを流し、若年層を中心としたユーザーが、どのようなコンテンツや店内の仕掛けに反応を示すかも分析する。AIカメラの映像から「どのようなユーザーが、店内のどの場所で、どれほど滞在したか」を調査することで、ユーザーの趣味趣向をくみ取り、より顧客満足度の高い店舗づくりを行う。一方ショーケース・ギグは、モバイルオーダープラットフォームの注文履歴から顧客の購買データが取れる。両社は異なるアプローチながら、ともにThe Label Fruitを通じて販売に関するデータを取得し、自社のサービスに生かしたい考えだ。それぞれのデータを掛け合わせ、OMO(オンラインとオフラインの融合)のノウハウを培っていくのが協業の目的だ。
両社は今後も協業を続けていく。現段階での構想は大きく2つ。1つは、ファストフードなどの別業態や他のエリアでも、BOPISのシステムを取り入れた店舗を展開すること。もう1つは、BOPISでの店舗運営方法をパッケージ化して外販提供することだ。サブスクリプション型のモデルにすることで、飲食店は初期費用を抑えて効率化された店舗を運営できると想定している。』


Vol.122 2022年2月号

2022年02月01日

早いもので年が明けて1カ月が過ぎました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか?
今月も元気に経営サポート隊通信をお届けいたします!

【河合由紀子のちょっとイイ話】
新型コロナウイルスが変化を続けながら世界中に蔓延し、人間はなかなか思うような行動ができない日々が続いています。やっかいなウイルスですが、彼らは生き残るために自ら変化し続け、絶滅させられないように工夫をし続けているように見えます。人にとっても組織にとっても、生き残るために変化を続けることが大切なんだと改めて感じさせられます。
今月は、一倉定氏の著書の中から、社員の指導に際して、『云わせてはならないこと』のなかから一節をご紹介したいと思います。(一倉定の社長学シリーズ「内部体勢の確立」(日本経営合理化協会出版局)より)

『社員が社長の指令をはねつける伝家の宝刀がある。それは「ムリですよ」という言葉である。これに対して「ムリではない」と云うのは、明らかに社長の負けである。ムリかムリでないかは完全な水かけ論であって、決着は絶対につかないからである。社員が伝家の宝刀を引き抜いて身構えているのであるから、まずこの宝刀を叩き落さなければならない。これは意外に簡単である。「そうだ、社長もムリと思う」と云えばよい。社員の主張を社長が認めてしまえば、社員はもう何も云うことがなくなるのだ。宝刀を叩き落したら、こちらから切りこむのである。「社長もムリを承知で頼むのだ。やってくれ」と。これで完全に社長の勝ちである。社長にムリを承知で頼まれたら、もう何も云わずにやってみる外はないのだ。
社員が「ムリですよ」と云うのは、できなかった時の予防線なのである。それを「ムリではない」と云えば、これは「できて当たり前、できなければボンクラだ」と云っているのに等しいのである。これでは、社員はたまったものではない。「ムリだ」という主張を変える筈がないのだ。「ムリだ」と社長が認める時には、できなくて当たり前、できたら手柄になるのである。ここのところの“理屈”というよりは“心情”というものを知っていることが大切なのである。それを観念論者は「ムリを云ってはいけない」と教える。ムリかムリでないかは誰がどうやって判定するのだ。低能の発想以外の何物でもないのである。
「僕が社員に要求することは、我ながらムリばかり云っていると感じる。しかし、ムリを云わなければならないのが社長の立場だ。ムリを云わずにいたら会社はつぶれてしまう」と。これは、超優良会社I社長の言である。厳しい現実は、過去においてできなかったこと、ムリなことをやってのけなければ存続はできないのだ。ムリを社員に要求するということは、社長の威厳を示すものでもなければ、社員を苦しめるためのものでもない。それは、会社を存続させるためであり、これがひいては社員の生活を守るためのものなのである。』

冒頭、ウイルスの生き残りをかけた変化について書きましたが、存続のためには、人や組織も社会の変化に合わせて変わることが必要です。そして、変わるためにはムリをしなければならないことがあります。ムリかムリでないかの議論は、なぜムリなことをしなければならないのかという理屈を抜きにした水かけ論であり、組織のトップである社長が存続のために「ムリを承知でやってくれ」というのが、組織が団結して前に向かって進むことのできる姿だと、一倉氏は教えてくれています。


Vol.121 2022年1月号

2022年01月05日

新年明けましておめでとうございます。
本年も皆様のお役に立てるよう一同精進いたしますので何卒よろしくお願いいたします!

【河合由紀子のちょっとイイ話】
皆様、昨年はどのような年でしたか?そして今年はどのような年にされたいですか?
2019年終わりから始まった新型コロナウイルスのパンデミックにより、なかなか明るい話題を見つけにくい世の中ですが、一つでも何か良いことのある一年にしたいと思っています。
新型コロナウイルスとの戦いも早いもので2年を超えました。昨年にはワクチンが開発されその接種が進む中、各国の特徴がよく表れたと思います。今月はアメリカと日本でのワクチン接種の考え方やプロセスの違いについて考えてみたいと思います。
日本はワクチン接種の開始は他国に後れをとっていたものの、接種が開始されるとあっという間に70%を超え、私がこの文章を書いている12月第3週時点で78.2%となっています。一方、接種開始時期の早かったアメリカでは同日現在でも61.6%となかなか数字が伸びません。
人と違っても気にしないアメリカ人と、人と同じことで安心する日本人の特徴がよく表れていると思います。アメリカでは接種したい人はさっさと接種してしまっていますので、残りの人たちは接種したくない人たちです。その人たちにワクチンを接種してもらうためにテレビでCMを流したり、接種していなかったために身内を亡くしたひとの話をニュースで取り上げたりしていますが、なかなか数字は思うように上がらないようです。一方日本では、ワクチンに対するデマなどが流れてもなお、短期間での素晴らしい接種率が達成されています。アメリカでは世間話の中でワクチンを接種しているかどうか聞かれたときに、接種していない人が「していない」と言っても、それを聞いた人の反応はあまりなく、「そうなんだ」程度です。同じことが日本であった場合どうでしょうか?「どうして打たないの?」の反応が普通ではないでしょうか?この感覚が接種率を高くしているといえると思います。
また、ワクチン接種に至るまでのプロセスも両国の特徴がよく表れていると感じました。アメリカではワクチンが接種できる体制は政治の力で早く整えられ、接種する際の手続きもいたって簡単で、丁寧な説明などもなく、例えば副反応については「パンフレットが置いてあるから、自分で取って読んでおいてくださいね」程度です。これに対し、日本ではワクチンを接種するための体制づくりに時間がかかっていたように感じました。接種券を発行したり、どの自治体にどれだけ配布するかで混乱したりといろいろありましたが、接種が開始されれば当初混乱していても現場での改善が進み、丁寧でスムーズな運営がなされていました。
どちらが良いとか悪いとかいうことではありませんが、日本の強みは現場力だと改めて感じました。日本には本当に素晴らしい中小企業がたくさんあります。その中小企業が大企業ではできない産業の隙間を埋めることにより、国全体としての力があるのだと思います。そして、弊社はその力の発展に貢献していける組織であり続けたいと思います。

2022年が良い年になりますように!!


Vol.120 2021年12月号

2021年12月01日

今年も残り1ヶ月となりました。
今月も今年最後の経営サポート隊通信を元気にお届けいたします!

【河合由紀子のちょっとイイ話】
今月は、電気自動車メーカーのテスラ社が始めた独自の自動車保険について、日経ビジネスオンラインの記事からご紹介したいと思います。
『「今後、保険が重要な部分を占める。自動車事業のバリューの30~40%が保険事業になるだろう」(中略)イーロン・マスクCEOが1年ほど前(2020年)に語っていたのが、自動車保険が自動車メーカーにとって重要になるという未来だ。その一端を見せる保険サービスをテスラが10月にテキサス州で始めた。ドライバーの運転行動を数値化した「安全運転スコア」を基に、月ごとの保険料を算定する。スコアが高いほど安全に運転するドライバーとみなして保険料を安くし、スコアが低ければ保険料を高くする。これまでカリフォルニア州で同種の保険を提供してきた同社だが、安全運転スコアを基に保険料を月ごとに変更するのは初めてとなる。かつての自動車保険は、年齢や運転歴、車種、事故歴などを基にした等級で「保険料がほぼ決まっていた」。そこに運転行動の情報を盛り込もうとしたのが「テレマティクス保険」だ。一部の保険会社は、車内に設置する専用の装置を貸し出したりスマホアプリを提供したりして運転行動を把握する取り組みを始めている。ただし、「従来の等級で決めた保険料が基本で、割引に利用するなど、まだ“おまけ”の範ちゅうから抜け出せていない」のが現状だ。
テスラの新型保険は、年齢や性別、事故歴といったドライバーの属性情報は利用せずに、安全運転スコアだけで保険料を算定する点が新しい。車両の詳細な走行データにアクセスできる自動車メーカーならではの自動車保険と言える。テスラが安全運転スコアの算出に用いる評価項目は5つある。(1)急ブレーキをかけた頻度を示す「Hard Braking」、(2)急激なハンドル操作をした頻度を示す「Aggressive Turning」、(3)前方衝突警告が出た頻度を示す「Forward Collision Warnings」、(4)前方車両と十分な車間距離を取らなかった頻度を示す「Unsafe Following」、(5)運転支援機能「オートパイロット」が解除された回数を示す「Forced Autopilot Disengagement」だ。
車載端末やスマホを使うこれまでのテレマティクス保険は、内蔵するモーションセンサーで急激な加減速や速度超過などの情報を取得することが多い。テスラの新型保険は、車載カメラで撮影した映像などを基に車載コンピューターが検知・判断した情報も生かしているのがポイントだ。安全運転を促す仕掛けも用意した。テスラ車のドライバー向けスマホアプリから安全運転スコアを確認できるようにしている。このアプリでは、いつ、どこに向かったときの運転に問題があったかが分かるほか、5つの評価項目のどの数値を改善すれば安全運転スコアを高めやすいかをシミュレーションする機能も備える。アプリ内には5項目の数値を高めるコツも記載されている。テスラ車のドライバー向けスマホアプリで安全運転スコアと各評価項目の値を確認できる。テスラは、新型保険サービスを始める前から安全運転スコアを算出していた。テスラが開発した新しい運転支援機能を先行提供するユーザーを選定する基準として利用してきた。新機能の先行提供に加えて新たに保険料の引き下げという「特典」を与えることで、ドライバーにさらなる安全運転を促そうとしている。21年7~9月期の決算発表会でテスラは、既に約15万台が安全運転スコアを利用しており、このスコアの利用者は非利用者に比べて衝突事故を起こす確率が3割ほど低いと説明している。もっとも、テスラが用意した評価項目と安全運転がイコールであるかどうかは別の話だ。ドライバーがスコアを上げようと思うあまり危険を伴う操作をしてしまう可能性もある。テスラが定めたアルゴリズムにドライバーが監視される状態を真の安全運転につなげるためにも、テスラは安全運転スコアの基準を慎重に決めていく必要がある。』
この記事を読んで、IOTの活用により、消費者一人ひとりに商品がカスタマイズされる時代がすぐそこまで来ていると感じました。

今年も大変お世話になりました。皆様良い年をお迎えください。
来年もよろしくお願いいたします!!


Vol.119 2021年11月号

2021年11月01日

今年も残り2ヶ月となりました。
今月も経営サポート隊通信を元気にお届けいたします!

【河合由紀子のちょっとイイ話】
今月は日経ビジネスオンラインの記事から、AI翻訳機「ポケトーク」などで知られる
東証一部上場のソースネクスト会長松田憲幸氏のインタビュー記事を一部ご紹介したいと思います。
『―2012年に米シリコンバレーに移住して9年。そんな松田さんの目に、コロナ下の日本と米国の違いはどう映りますか。
松田:コロナ前も今も、アメリカ人は楽観的で笑顔が多い。日本に帰るとコロナの状況が永遠に良くならないのではないかと感じられるくらい、暗いニュースばかりが流れている。だから私は、日本の家にテレビは置いていません。アメリカの株価が上がり続けているのも、「今よりもっといい未来が来る」とみんなが考えているからです。アメリカにいると、何でも実現できるような気がしてくる。私がアメリカに来て、一番学んだのはその精神です。周りの普通の人がどんどん成功していくのを見ていると、自分もできるんじゃないかと思えてくるのです。
―なぜ違うのでしょう。
松田:子供の教育では、日本人はみんなと同じにするのがいいという考え方を大切にしますが、アメリカ人はいかに他者と差異化するかという考え方を教えます。「なぜあなたはこれができないの」と追及はしない。それぞれが、それぞれの夢を持っている。大きな夢を公言してもばかにされません。「(フェイスブック創業者の)マーク・ザッカーバーグみたいになる」とアメリカ人は平気で言いますが、日本でそんなことを言ったら「無理に決まっているじゃないか」と笑われるでしょう。また、米国人は「Congratulations(コングラチュレーション)」という言葉をよく使います。例えば初対面の人にソースネクストの事業の変遷を説明すると、「IPO(新規株式公開)おめでとう」と言われる。日本ではIPOをした直後なら「上場おめでとう」と言うけれど、10年以上も前のIPOのことを今さらたたえないですよね。でも、アメリカでは称賛される。「Congratulations」の裏には、「いずれ自分もそうなってみせます」という気持ちが確実にありますね。アメリカは広いので一概にはくくれませんが、ここシリコンバレーでは、物事に限界はないとみんなが思っています。
―松田さんも限界を取り外すことができましたか。
松田:ええ。やはり、身近な会社がどんどん大きくなりますからね。料理の宅配を手がけるドアダッシュの創業者トニー・シューと知り合った13年、彼は自分で配達もしていました。私の家に配達に来ると、必ず後で「今日利用してみて、どう思う?」とメールが来る。「日本食レストランがないよね」と言うと、いつの間にかちゃんと入っている。そんなやり取りをしているうち、あれよあれよという間に何千店、何万店の飲食店と提携し、昨年株式上場して時価総額が6兆円にもなりました。そんな例が山ほどあります。その辺を歩いている人がいきなり1兆円企業をつくってしまうのですから、ソースネクストも、せめて1000億円企業になってもおかしくない。そう思えるようになって17年12月にAI通訳機「ポケトーク」を発売したら、時価総額が1000億円を突破した。「俺にもできるんじゃないか」と思うことはやはりすごく重要ですよね。』
ポケトークは数年前にある社長様からご紹介いただき、実際に使ってみたこともあります。驚いたのは、オンラインで使うための通信費用が2年間無料で使えるようになっていることです。これはWi-Fiに繋いだりスマホにデザリングする必要がなく、海外にそれだけ持って行っても使えるということです。定額の支払いが発生すれば、試してみることを躊躇する人も多いのではないかと思うのですが、その障壁をなくすことにより手軽に始められ、その良さがわかってもらえれば継続して使ってもらえるというのが狙いだと思います。翻訳機能は素晴らしく、さすがにコテコテの関西弁は翻訳してくれませんが、それは人間の通訳でも同じことだと思いますので、かなりの精度だと感じました。インタビューの中で松田氏が答えているように、アメリカでは、できないことよりもできること、悪い面より良い面にフォーカスを当てる人が多いように思います。それは社会全体の空気や小さなころからそのような教育を受けているからだと感じます。メリットもデメリットもあるとは思いますが、イノベーションを起こすには良い風土だと思います。


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